タイムラプスインキュベーターについて
皆様からお預かりした受精卵は、受精卵の培養に適した温度や湿度、酸素、二酸化炭素などの空気の組成が調整された培養器内で培養していきます。
近年、一定間隔で撮影した写真をつなぎ合わせて動画にする「タイムラプスシネマトグラフィー」という機能を搭載したタイムラプスインキュベーターが開発されました。タイムラプスインキュベーターには6分間隔で連続撮影した写真をつなぎ合わせて動画にする「タイムラプスシネマトグラフィー」という機能が搭載されており、受精~胚盤胞期胚に至る全過程を動画として保存することができるため、成長過程で起こる様々な現象を見逃さずに培養できます。これは実はとても重要なことです。
当院でもタイムラプスインキュベーターを導入いたしました。
タイムラプスインキュベーターのメリット
1.培養環境の安定
従来のインキュベーターでは、発育の確認のために受精卵を外に出して顕微鏡で観察する必要がありました。受精卵の観察は必要不可欠な操作ですが、温度や酸素、二酸化炭素といった空気の組成が全く違う環境にさらされるので、受精卵にはストレスとなっています。このような受精卵へのストレスを軽減するため、観察の回数を極力少なく、短時間で行う必要があり、胚の状況を詳しく知るための大きな壁となっていました。
カメラが内蔵されたタイムラプスインキュベーターではカメラで受精卵の観察を行うため、観察時の環境変化がなく受精卵の観察を行うことが可能となりました。その結果、従来型のインキュベーターを使用するよりも培養成績が向上することが数多く報告されています。
2.より確実な受精確認
体外受精では採卵の翌日に前核と呼ばれる小さな核を観察し、2個であれば正常受精、3個以上は異常受精などと判断します。しかしこの前核はずっと存在するわけではなく、早く出現して早く消失するものや、遅く出現するものもあります。従来の観察では、受精卵を外に取り出して顕微鏡で見た時しか確認できません。そのため受精した約10~15%の卵子で前核が観察できませんでした。前核の確認できなかった受精卵でも順調に発育するものもあります。さらに、前核が早く出現し早く消失する受精卵は、発育の良い受精卵で胚盤胞(着床する直前の状態)まで成長する割合が高く、移植後の妊娠率が高いこと*1が知られています。しかしながら、前核が確認できなかった場合は、正常に受精していたのかどうかわからず、胚盤胞に成長したとしても移植対象から外す、または移植順位を下げるといった事を行わざるを得ませんでした。
タイムラプスインキュベーターを使用することにより、前核のより確実な観察が可能となり受精確認の精度が高まります。トップクオリティーの受精卵を、移植対象から外さず、移植順位を下げないようにする事は、早期の妊娠を目指すためにとても意義のある事と考えます。
3.受精卵の連続した観察
タイムラプスインキュベーターを使用することにより、受精卵に起きた様々なことを確認できます。
通常受精卵は1つの細胞が2つに分裂し、またその細胞がそれぞれ2つずつに分裂し、これを繰り返すことで細胞数を増加させています。しかし、1つの細胞がいきなり3個の細胞に分裂したり、2つに分裂した細胞が再び融合してしまう現象が知られています。これらは若い年齢の方にも頻繁に起きており、いずれも早い段階で起こるほど受精卵に悪影響があることが知られています*2。このような受精卵のダイナミックな変化はタイムラプスインキュベーターでは観察可能ですが、従来のインキュベーターではわかりません。
このような現象を起こした受精卵も、割合は低くなりますが胚盤胞に成長します。妊娠、出産に至る例は数多くあり、一概に移植対象から外すべきという訳ではありません。しかし、正常に分裂した受精卵の移植と比べると妊娠率が低下する事が指摘されています*3。そのため、移植可能な受精卵が複数ある場合、異常な分裂の有無も移植順位の参考とするべきです。
4.最新の受精卵評価プログラムの使用
さらに、当院に導入されているタイムラプスインキュベーターには「KIDScore(キッズスコア)」という受精卵を評価するプログラムや、「iDAScore(アイダスコア)」と呼ばれる最新のAIによる胚評価(妊娠予測)機能が搭載されており、従来の胚評価 (Gardner分類)に加え、様々な方法で胚を評価することが可能となりました。
これらの胚評価は主に移植する胚の決定に用いられ、高いスコアの胚盤胞から移植をすることで、より早い妊娠を目指します。
以上のメリットから、より多くの受精卵を胚盤胞へと培養し、さらにはより良い胚盤胞から移植を行うことが可能となります。それによって不妊治療期間の短縮につながると考えます。
タイムラプスインキュベーターは大変高価であるため、受精確認のみに使用したり希望しても満室で使用できない施設も多い中、当院では全患者様*に受精確認から培養全行程でタイムラプスインキュベーターをご使用いただけるだけのキャパシティーを確保しております。
*タイムラプスインキュベーターの使用は加算料金が発生します。(タイムラプスインキュベーターは先進医療に認められているため、保険診療と併用して行うことができます。ご希望があればタイムラプスインキュベーターを使用しない従来の培養器を用いた培養も可能です。
*1 Analysis of embryo morphokinetics, multinucleation and cleavage anomalies using
continuous time-lapse monitoring in blastocyst transfer cycles
Nina Desai et al. 2014
*2 Effect of morphokinetics and morphological dynamics of cleavage stage on embryo
developmental potential: A time-lapse studyYang SH1 et al. 2017
*2、3 RESEARCH ARTICLE Direct Unequal Cleavages: Embryo Developmental
Competence, Genetic Constitution and Clinical Outcome
Qiansheng Zhan et al. 2016
*3 Are cleavage anomalies,multinucleation,or specific cell cycle kinetics observed with
time-lapse imaging predictive of embryo developmental capacity or ploidy?
Nina Desai et al. 2018
クリニック概要
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不妊症治療、不育症治療、ブライダルチェック |
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土曜日は比較的混雑いたします。お待ちいただくこともありますのでご了承下さい。
当院は不妊・不育治療のクリニックですので、お子様同伴でのご来院はご遠慮願っております。
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